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「テクノトート」:サバクガメの生物保全に取り組むロボット戦士

Hardshell Labs 社は 3D プリントとブドウ香料のスプレーを組み合わせることで主な捕食者であるカラスをだまし、サバクガメの保全活動を推進しています。

Hardshell Labs 社は 3D プリントとロボット工学のテクノロジーを活用し、サバクガメの保全に取り組んでいます。(ビデオ:6 分 17 秒)

  • 南カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠でカラスが増加し、捕食により子ガメの個体数を減らしています。

  • Hardshell Labs 社は、3D プリントされた子ガメサイズの「テクノトート」で鳥をおびき寄せ、ブドウ香料として知られるアントラニル酸メチルを噴出することで抑止するというソリューションを開発しました。

  • 予備調査では、カラスの飛来が 46% 減少していました。Hardshell Labs 社は、全米科学財団とルーズベルト天才賞の奨励金で研究を継続しています。

南カリフォルニアのモハーヴェ砂漠で、カラスの個体数が爆発的に増加している原因は、人間の進出によって食物や水の入手が簡単になったことです。ゴミや轢き殺された動物が食糧を、灌漑や流出水、人工の湖や池が水を供給し、ビルや電柱、看板が巣と隠れ家を提供します。つまり、人間がカラスの欲求を満たしているのです。

現在、砂漠における侵略種とされているカラスは、その個体数の増加によって新たな食料源を必要としています。そして大量発生したカラスによってサバクガメの個体数が減少し、いまや絶滅の危機に瀕しています。残念なことに、幼体のカメは甲羅が柔らかく、空腹のカラスのくちばしから身を守ることができないため、捕食されてしまいます。

この重要な爬虫類を救うために何ができるでしょうか?保護生物学者の Tim Shields 氏とエンジニアの Frank Guercio 氏が見つけた回答が「テクノトート」です。

カリフォルニア州ジョシュアツリーの Hardshell Labs 社で働く Shields 氏と Guercia 氏は、Autodesk Fusion 360 を使用し、本物の亀の甲羅のように見えるが、保護用のテクノロジー装置、テクノトートを設計し、3D プリントしました。このテクノトートには、一般的にはブドウ香料として知られる、鳥が嫌うアントラニル酸メチルが収められています。カラスのくちばしがテクノトートをつつくと、加速度センサーが作動して化学物質が一気に放出され、カラスが破壊するのを阻止します。Shields 氏と Guercia 氏はこれを「回避的訓練」と呼んでいます。十分な数のカラスが十分な数のテクノトートをつつくことで、カラスは本物のカメを捕食しなくなるという考え方です。予備調査によると、この方法はうまく機能しています。

テクノトートがどう機能するか、そしてその保全活動の詳細をビデオでご紹介します。

[ビデオのトランスクリプト]

Tim Shields(Hardshell Labs 社の保護生物学者):私はずっとフィールドの爬虫類学者になりたいと思っていました。14 歳のとき野生のカメに出会いました。初めて出会ったカメに心底魅了されました。カメを研究する生物学者としてこの仕事をすることになり、同じプロジェクトに 30 年にわたって携わってきました。重点を置いてきたのは個体数の変化の追跡ですが、その変化はすべてマイナスでした。

[Shields 氏がサガクバメに関する看板を指差し、声に出して読み始める]「自然地域には 1 平方マイルあたり約 200 匹のカメがいる」 現在は違います。(この数字は)過去の良き思い出ですね。

カラスが多くの子ガメを殺していると、すぐに分かりました。カラスの数は非常に多く、カメは本当に少なくなっています。子ガメが西モハーヴェで生き延びる確率はかなり低いのです。その数にはかなり単純な相関関係があります。人間が増えればカラスが増え、カメが減ることになります。何年もの間、カラスを抑制するための私のテクノロジーは、カラスを追いかけ、石を投げつけることでした。

どうやったら偽のカメを作れるかと考え、そして出会ったクレイジーな Frank Guercio はとても吸収力の高い人物でした。リアルな偽の子ガメを作ろうと提案したところ、彼はそれに取り組み始めました。

Frank Guercio(Hardshell Labs 社のエンジニア):この分野や業界は、「保全技術」と呼べるかもしれません。 新しいもので、これまでは存在しませんでした。これまで 10 年にわたる Tim との付き合いの中で、私はカメを作り、ローバーを作り、エッグ オイラーやレーザーを作ってきました。さまざまな大きさ、形、種類のカメを作りました。とても気に入っています。

3D プリントをしていなければ、問題解決に取り組んでいなければ、デザインをしていなければ、蕁麻疹が出てしまいます。じっとしては、いられません。未来にカメが存在してほしいなら、デザイナーとして解決策を見つける必要があります。

Shields:このプロジェクトの原動力となるのは回避訓練です。人工的なブドウ香料であるアントラニル酸メチルは、理由は分かりませんが、カラスなどの鳥類が嫌うのです。

Guercio:[Guercio は 3D プリントされた亀の甲羅を 2 つ持っている] この内側に袋が収められています。

Shields:(テクノトートが)叩かれると即座に加速度センサーが働き、叩かれていることを理解します。そしてくちばしがそこにある状態、つまり敏感な器官の目の前で突然噴出されるのです。それは十分に恐ろしい経験になるでしょう。カラスは、生きているカメに構わないよう教育されるのです。カラスの扱いには注意が必要です。仕掛けがばれてしまうと、そこでゲームオーバーです。だから、より正確に、より説得力のあるフェイクの子ガメを作ろうとしてきました。

Guercio:これはおよそ 50 ミクロン、つまり 1/500 ミリの解像度でプリントされています。

Shields:驚くべき進歩です。彼は休みなく働きますから。こだわりの強い人と仕事をするのは実にすばらしいことです。

Guercio:カメの有機的な形状など、非常に複雑なジオメトリをインポートすることは、どんな業界のプログラムでも非常に難しいことです。特にカメの場合は、オブジェクトとしてメカニカルな編集を行える状態にするには、後工程で非常に多くの作業が必要でした。[Autodesk] Fusion 360 は素晴らしいツールです。オートデスク製品に慣れ親しみ、実際に使えるようになると、大きな門が開かれましたカメの内部構造を作ることができましたが、それは 5 年前にはほぼ不可能でした。

Shields:一定数のカラスがテクノトートで嫌な経験をすれば、襲撃の頻度は下がるでしょう。

Guercio:カメが手足を引きちぎられるのを見て、そして反撃するカメを見て、本当にカタルシスを感じました。私はずっとモハーヴェに関わっています。過酷で容赦無い場所ですがここが私の居場所です。ここは 3 ヵ月後には 100 台のプリンター、フィラメント製造ライン、樹脂プリンター、CNC 加工機、レーザー カッターなど、問題解決に使えるものすべてが揃うスペースになります。多くの子どもたちが 3D プリンターを利用し、土地管理局と作業を行って、カメの保護に携わっているでしょう。この機会を Tim と活用し、世界や種を救うことで、この地域へ即座に影響をもたらすことができる。これは最初のステップに過ぎません。

Shields:既にプラスの効果をもたらしていると考えています。

Guercio:ここで作り出したものを、世界の他の問題にも応用できるポイントにまで到達しようとしています。

Shields:保全生物学は、現時点ではかなり絶望的な取り組みとされています。そのため、保全のコミュニティに希望を与えることは、私個人にとって本当に重要なことなのです。

Guercio:自分の作ったものが変化をもたらすのを目にするのは、とても満ち足りた経験です。